忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 それから。

 亜美は時々。

 軽音サークルの部屋へ行くようになった。

 毎日ではない。

 ダンスサークルがある日は行けない。

 講義が遅い日も。

 丈と会う日も。

 行けない。

 それでも。

 時間が空くと。

 足が向いた。

 幸也がいない日もあった。

 軽音サークルが練習をしていて。

 近づけない日もあった。

 女の人と話している幸也を見つけて。

 声をかけずに帰った日もあった。

 それでも。

 あの音が聞こえると。

「…………」

 足が止まる。

 そして。

 少しだけ嬉しくなる。

「また来た」

 幸也が笑う。

「……だめですか?」

「言ってないじゃん」

「じゃあ、いいですか」

「いいよ」

 そんな会話をして。

 亜美は座る。

 幸也が鍵盤に触れる。

 音がする。

 あの日。

 高校生だった自分が。

 初めてここで聴いた音。

 ずっと。

 忘れられなかった音。

 それを今は。

 何度でも聴くことができる。

 大学に入って。

 また。

 あの音に会えた。