忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 軽音サークルの部屋へ向かう。

 幸也がいるかは。

 分からない。

 そもそも。

 今日、練習があるのかも知らない。

「…………」

 少しずつ。

 部屋へ近づいていく。

 でも。

 いつまで経っても。

 ギターも。

 ドラムも。

 歌声も聞こえてこない。

「…………」

 今日は。

 誰もいないのかな。

 少しだけ。

 胸が沈んだ。

 来れば会えるなんて。

 思っていたわけじゃない。

 分かっていた。

 それなのに。

 勝手に期待していた自分に気づく。

「…………」

 やっぱり。

 帰ろうかな。

 そう思った。

 そのとき。

 音がした。

「…………」

 一つ。

 また一つ。

 静かな廊下に。

 鍵盤の音が響く。

 亜美の足が止まった。

 知っている。

 この音。

 胸が。

 一気に騒がしくなる。

 さっきまで。

 帰ろうとしていたのに。

 もう。

 足は音のする方へ向かっていた。