忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 練習が一段落して。

 休憩になった。

「疲れたー!」

 光成がその場に座り込む。

「光成、さっきも言ってたよ」

 鉄も隣に座った。

「疲れたもんは疲れたんだよ」

「そっか」

「鉄は?」

「疲れた」

「一緒じゃん!」

「うん」

「何なんだよ!」

 近くにいた亜美が思わず笑った。

「あ!」

 光成が顔を上げる。

「笑ったな?」

「え?」

「今、俺のこと笑っただろ!」

「……少しだけ」

「正直!」

「だって面白かったから」

「いいじゃん。亜美ちゃん、もっと笑えって!」

「何でですか」

「その方が楽しいだろ」

「…………」

「あ、今ちょっと引いた?」

「引いてないです」

「ほんと?」

「たぶん」

「寧々と同じこと言うじゃん!」

 また笑ってしまう。

「そういやさ」

 光成が亜美を見る。

「ちゃんと名前聞いてなかったよな」

「そうでしたっけ」

「俺、光成。二年!」

「鉄だよ。俺も二年」

「亜美です」

「それは知ってる」

「知ってるんですか」

「群司が呼んでたから」

「ああ……」

「亜美ちゃんでいい?」

「はい」

「よろしくな!」

「よろしくね」

「よろしくお願いします」

「固っ!」

「だって先輩ですよね?」

「いいって、そんなの!」

「でも……」

「亜美ちゃん、ずっとこんな感じだよ」

 寧々が近くに座る。

「私にもまだ敬語だもん」

「寧々先輩は先輩なので」

「ほら」

「真面目だなー」

「群司も真面目だよ」

 鉄がのんびりと言った。

「俺?」

 少し離れたところから声がした。

 群司が振り返る。

「呼びました?」

「呼んだよ」

「何ですか」

「真面目だって話」

「何その話」

「群司もこっち来いよ!」

 光成が手招きする。

「何でですか」

「いいから!」

「絶対ろくなことじゃないでしょ」

「失礼だな!」

「光成だからね」

「鉄!?」

 群司が笑いながら輪に入る。

 誰かが自己紹介を始めようと言ったわけでもない。

 ただ話して。

 名前を知って。

 また別の話になって。

 少しずつ。

 お互いのことを知っていく。

「そういや、俺もちゃんと名乗ってなかったな」

 近くにいた先輩が口を開いた。

 見学の日に話してくれた人。

「三年の穂高。ここのまとめ役やってる」

「またまとめ役って言ってる」

 光成が笑う。

「サークル長でいいじゃん!」

「どっちでもいいだろ」

「穂高先輩、いつもそう言うよね」

 鉄も笑う。

「よろしくお願いします」

「よろしく」

 亜美は小さく頭を下げた。

 穂高。

 見学の日は。

 もう少し近寄りがたい人だと思っていた。

 真面目で。

 しっかりしていて。

 少し怖そうで。

 でも。

 光成や鉄と話している姿を見ると。

 思っていた人とは、少し違うのかもしれない。