忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 けれど。

 知らない人ばかりの場所。

 自分からその中に入っていくことを考えると、やっぱり少し不安だった。

 亜美は隣を見る。

 群司と目が合った。

「何?」

「…………」

「不安?」

「ちょっと」

「そっか」

 群司は無理に笑わなかった。

 入れとも言わない。

 ただ少し考えてから。

「じゃあさ」

「うん?」

「亜美も一緒にやらない?」

「マネージャー?」

「うん」

「…………」

「俺もいるし」

 その言葉が、すっと胸に入ってきた。

 大学に入った日もそうだった。

 知らない顔ばかりで。

 知らない場所で。

 少し緊張していた。

 でも。

 群司が隣にいたから大丈夫だと思えた。

「……群司、入るんだよね」

「うん」

「ずっと?」

「入った次の日に辞めたりしないよ」

「分かんないじゃん」

「しないって」

「ほんと?」

「ほんと」

 群司が笑う。

 その顔は。

 高校の屋上で何度も見た顔だった。

「…………」

 だったら。

 少しくらい。

 知らない場所へ入ってみてもいいのかもしれない。

「……やってみようかな」

「え?」

 今度は群司が驚いた。

「何その顔」

「いや。ほんとに?」

「うん」

「無理しなくていいよ?」

「してない」

「ならいいけど」

「群司が誘ったんでしょ」

「そうだけど」

「じゃあ、やる」

「…………」

 群司の顔が、少しずつ緩む。

「嬉しそう」

「そりゃ嬉しいよ」

「何で?」

「一緒にできるから」

「群司は踊るだけでしょ」

「同じサークルじゃん」

「まあ、そうだけど」

「それでいい」

 亜美は少しだけ笑った。

「じゃあ」

 先輩を見る。

「マネージャー、やってみたいです」

「よろしく」

「よろしくお願いします」

 頭を下げる。

 まだ。

 何をするのかも、ほとんど分からない。

 うまくできるのかも分からない。

 それでも。

 少しだけ楽しみだった。

 こうして。

 亜美は、ダンスサークルのマネージャーになった。