忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「……上手」

 自然と声が漏れた。

 もっと見ていたい。

 そう思った。

 曲が止まる。

「経験者じゃん」

「いや、ブランク長いんで」

「全然いける。身体覚えてるだろ」

「まあ……ちょっとは」

 周りから声をかけられて、群司が照れたように頭を掻いている。

 その瞬間。

 亜美の知っている群司に戻った。

「…………」

 なんとなく、ほっとした。

 自分でも理由は分からない。

 亜美は小さく笑った。

「どうだった?」

 戻ってきた群司が聞く。

「上手だった」

「……ほんと?」

「うん」

「疑ってたのに」

「疑ってたからびっくりした」

「それ褒めてる?」

「褒めてるよ」

「ほんとに?」

「ほんとに上手だった」

「…………」

 群司が黙る。

「何?」

「いや」

「何?」

「亜美がそんな素直に褒めてくれると思わなかった」

「失礼」

「ごめん」

 群司が笑う。

「でも、そっか」

「うん」

「ならよかった」

 久しぶりに踊った。

 思っていたより身体は覚えていた。

 音が流れた瞬間。

 昔の感覚が少しだけ戻ってきた。

 それも嬉しかった。

 でも。

 亜美が見ていた。

 ずっと。

 自分が踊るところを見て。

 上手だったと笑ってくれた。

 今は、そのことの方が嬉しかった。