それに応じ、玉座に腰を落ち着けたまま重たい声を発したのは肩幅が私の二倍くらい有りそうで角の生えた、とんでもない偉丈夫。まだ体調は完全に戻ってはいないだろうに、この場で見るとすごい威圧感。

 彼こそがジュデットの最高権力者、ベルケンド国王陛下である。
 陛下は私にありがたいお言葉を掛けてくれた。

「うぉほん。エルシアよ、この度は自らの体調も顧みず、儂の命を救ってくれたということで、誠に感謝しておる。しかも敵国セーウェルトの大聖女であったというそなたが、だ」
「わたくしも王妃ではなく……彼の妻としてお礼を申し上げます。よくベルケンドを救ってくださいましたね、エルシア」

 そして彼の隣に佇む王妃様も、本来の艶やかさを戻したお顔で微笑みかけてくれる。百合の花のようなドレスがとても素敵だ。

 だが私はというと、礼を失さないようにするだけで一杯一杯。

 これでも、王太子の婚約相手として国王や王妃様にお会いしたことは何度もあるから慣れている方なのだが、それでも緊張はやはり拭えない。