それだけ言うとベルケンド陛下はまたすぐに目を閉じて寝息を立て始め、王妃が感極まった様子で彼にすがりついた。

 ひとまずはこれで大丈夫。
 精神力の強そうなこの人ならば、ちゃんと投薬を続ければ徐々に症状は改善してゆくはず。
 
 よかっ、た……。
 手遅れにならずに済んだという安堵が、私の気を緩ませて。
 体はぐらっと傾く。足に力が入ってくれない。

「エルシア嬢!?」「おい、お前……!」

 どうやら、無理しすぎたみたい。
 その場に崩れ落ちる私をすんでのところで殿下が抱き止めてくれたようだけど、ほのかな温かさを感じるだけで、私の意識は速やかに遠のいていく。

「しっかりしろ、エルシア嬢!」

 そして、やり遂げたという充足感とともに、またしても王太子の腕の中で私は深い眠りに落ち込んでいった。

 折角目が覚めたっていうのに、これで当面の入院生活は避けられなさそうだ……とほほー。