とても素敵な考えだと思い、私も両手を振り上げ天空に向けて両手を振った。
 すると、一陣の突風が吹き、髪と周りの落ち葉を上に巻き上げてゆく。
 まるで私たちの声を天へと届けてくれるかのように。

 ――神様、私たちは今幸せです。私たちにこんなにも美しく、素晴らしい世界を贈ってくれてどうもありがとう。私たちをここに生んで、大切な人と会わせてくれて、ありがとう……。

 答えは返らない。けれど、陽射しや風、大地、空、他にもこの世の様々なものが、今ここに私があることを認めてくれている気がして。

 そのことが何よりも温かいメッセージに思えた私は、傍らの殿下と手を繋ぐと、いつもより綺麗に見えるこの世界を体一杯に感じようと、その場から足を踏み出した。

(おしまい)