耳の横を矢が掠め、わたしは目を向く。奴ら、本当に撃ってきやがった……!
 わたしはギーツ様の肩をバシバシ叩く。

「ギ、ギーツ様、もっと速度を! 速く!」
「分かっている!」

 ギーツ様は追っ手を撒こうと森に入った。
 木々の間をジグザグに奔る。
 後ろでは彼の部下がどんどん数を減らしていく。
 
 わたしはギーツ様に捕まりながらぶるぶる震え、身体を小さくした。
 なんせ、何本も矢が体の近くを通り、幹や大地にがんがん突き刺さる。
 戦はおろか、兵士たちの訓練すらろくに見たことの無いわたしには、それは恐怖以外の何物でもない。

「ギーツ様ぁっ、もっと本気出してくださいよぉ! おらこのヘボ馬、もっと早く走りやがれッ!」
「ああっ、やめろ! 我がアレニール号の尻を蹴るな! そんな事をしたら!」