でも……それでもだ。
 深夜の今。治療所と、そこから見える外への通路に患者は一人も存在しない。プリュムも隣にぺたんと足を崩す。

「やっと、一段落着いたんですね……。信じられない」
「地道にやればこなせるものよ、何事も」

 私たちはなんとか立ち上がると、お互いを支え合い大聖堂の外へと歩いていく。
 
 大聖堂の前に有るなだらかな長い階段にも、そこから王都の外までまっすぐに伸びる大通りにも、患者らしき人の姿は確認できない。
 
「これで明日からは、また前と同じような毎日が遅れるわね」
「ええ……エルシア様、あなたのおかげです。本当にありがとうございました!」

 深々と頭を下げるプリュムに、私は首を振る。

「私だけの力じゃないわ。あなたも皆も長い間必死に病気と戦い続けていたから、以前よりずっと、治療の腕は上がったはずよ。もう、私なんていなくても大丈夫」