そしてとどめにべえと舌を出し、うるさい女を追い出すとわたしは分厚い扉を閉めた。外から叩いてくる音がするが、そんなもの無視。ひたすらゲラゲラ笑い倒す。

「きゃははははは……! さあ精々頑張ってちょうだい。約束された私の輝かしい未来のためにね。さあさ、わたしはわたしで仕事の続きといきますか」

 大聖女の位なんか、私にとって踏み台の一つでしかないんだから。
 せめてこっちの手を煩わせないよう、上手く立ち回って欲しいものよね。
 
 わたしはどさっとソファの上に身体を投げ出すと、もう一度眼下の聖女たちを見下ろして満足げに微笑み、本のページを開いた……。


 ――この時、わたしはなんにも疑っていなかった。全てが順調に進み、やがてわたしがこの国で最も尊き王妃の座へと昇り詰めることを。

 しかし、思えばこの時すでに、足元が崩れる崩壊の音色は徐々に後ろから迫りつつあったのである。私はあの姉のことを、所詮ポンコツなのだと、甘く見過ぎていたのだ。