「ふん。エルシアの頼みだから着いてきてあげたんだもん」

 舌をべーっと出し睨んできた小さな妹に、殿下は困った様子で頭を掻いている。だがこの様子なら、二人の関係はもう大丈夫だろう。

「それで一体、わざわざ改まって話とはなんだ?」

 せっかちなベッカーが話を切り出すと、ミーミル様と抱き合っていた私は立ち上がり、ベッカーにあるものを手渡した。

「これを、あなたに渡しておこうと思って」
「これは……?」

 膨らんだ一抱え程の布袋の中身をベッカーは確かめ、目を丸くする。

「陽炎草……! そうか、ローエンの薬草園で育てたものが、収穫の時期を迎えたのだな」
「うん。半分は育ててくれた彼に。それで、半分はあなたに」
「ローエンに紹介され、プリシラと会ったのだったな」
「そうなの。陽炎草の栽培を提案されたけど、断っちゃった」