「待っていましたよ、クリス。エルシア、よく連れて来てくれましたね」

 次いで王妃が軽く目を見開き、穏やかに微笑む。けれどその頬は緩み、隠しきれない嬉しさがにじみ出ているのが分かる。そして……。

「どうして……」

 この場で唯一、刺々しい反応をしたのがミーミル王女だった。
 彼女は唇をぎゅっとすぼめ、殿下を睨み付けている。

「今さらどうして、兄様がここへ来たの?」

 私は一歩下がる。その冷たい声は殿下を傷つけるだろう。
 でもここは私なんかが口を出していい場面ではないと悟った。

「ミーミル、落ち着いて座りなさい。クリスにもこの子の考えがあったのよ」