殿下は立ち直った。その点ではあの時の我輩の言葉は正しかったのかも知れない。しかし……それは結果として彼自身の幸せを奪うことになってしまったのではないかと。

 エルシアが来てから、殿下は彼女のことをよく話すようになった。その時の殿下の自然な姿を見る度、我輩たちは彼に王太子という立場を強いてしまっていることを、よくよく感じてしまった。

 ――エルシアの事で彼がどういう選択をするのかは正直分からない。

 しかし、彼は昔とは違う。もうお飾りの王太子ではないのだ。多くの人々に認められ、期待を寄せられる立派な王太子となった。

(今ならば……あやつとなら、違う答えを。自分で答えを見つけ出せるのかも知れんな)

 我輩の頭に先日のエルシアの笑顔が思い浮かぶ。それは不思議と、この先の未来も悪いようにはならない……そんな気にさせてくれるものだった。