王城のクリスフェルト殿下の私室は、彼の希望により国王夫妻や王女の住居とはやや離れた、北の棟のはずれにある。我輩はある事後報告を聞くという体で、本日その場所を尋ねた。

「殿下、失礼致しますぞ」
「ああ、入ってくれ」

 やや険の帯びた声に、今の彼の不機嫌さが分かる。
 あまり自分の心中を表に出すことのない方だったのだが、最近は少しばかり感情豊かなあやつの影響を受けているのかも知れないな……誰とは言うまいが。

 中に入ると、そこには固い表情をした殿下の姿があった。

「あの件の調査が完了したのですか?」
「ああ。陛下が先だって罹患された病の感染経路が発覚した。先日捕らえた刺客が、感染源となった蜘蛛をこの城に持ち込ませたのだと吐いたよ」

 淡々と話す殿下の声が流れる中、我輩はその生物の姿を想像する。