優しく殿下が注意してくださった通り、そこかしこで土が盛り上がり、林道は結構歩きづらい。少々不格好だけど、ローエンさんから借りておいた長靴が役に立ちそうだ。

 転んだりして失くすと良くないので装飾品の類はまとめて手荷物に入れてある。なので今の私は人間の姿なのだが、ほとんど人も見当たらないし、セーウェルト人だとバレることはないだろう。

 さすがに遠くから見た限りではそこまで違いを感じることは無かったけれど、近づいてよくよく見渡せば本当に宝の宝庫。これはなんだろうという植物がいくつも発見できる。

(ローエンさんがいたらなぁ……)

 彼がいれば逐一、知らない植物の説明をきっと子細にしてくれたことだろう。でもそうそう彼に薬草園を空けさせることはできないし、ここは以前ベッカーから貰った薬草辞典を活用する時だ。

 色や形状ごとに分かれた項目から薬草を特定、特徴を頭に入れてゆく。
 危険が無いものはいくつか持ち帰ってみることにする。