「ええ。ジュデットの歴史学者たちが粘り強い交渉を経て他の国々に協力をいただき、太古の文献などを徹底的に調査した結果判明した事実ですから、まず間違いないかと。もっともセーウェルトだけは、頑なにそれを認めようとしませんが」
「そうよねえ……ふふっ」
「まるで私たち、当事者でないような口ぶりで話していますね」

 ついつい私は、ミーヤと顔を見合わせて笑ってしまった。だっておかしいんだもん。魔族の彼女とセーウェルト人の私がこうして話していると、そんな馬鹿げた話を誰が広めて、誰が信じたんだろうって思ってしまう。

 ミーヤが扉の方を振り向いた。

「ああ、やっとメイアが帰ってきました。今日は少し起きるのが遅かったから、水汲みの長い列に並んでいたのでしょう」

 音もしないのにそんなことを見てきたように言う彼女。そうするとしばらくしてメイアがカートを押しながら部屋を訪れて私に挨拶した。双子だからか、彼女たちは傍に居なくても、相手の行動がわかっているようなところがある。
 
 彼女たちは私たちと同じように、家族や仲間を慈しむ心を持っている。理由なく誰かを傷つけたりしないし、こちらが誠意をもって接すれば、ちゃんと仲間として迎えてくれる人たちだ。でも、そんなことを大勢のセーウェルト人たちは知りもしない。それが悲しい。