「だめだよ、話しかけちゃ。きっと、『むのう』とか、『きゅうりょーどろぼう』とか言われてる人なんだから。かわいそうだろ」
「うちのお父さん言ってた。落ちこぼれだと『させん』とか言ってどこかに飛ばされちゃうんだって。そうされないよう頑張ってるんだよ、きっと」

 無能……無能……無能。

  片手に吊るされた籠から子供たちががさがさと勝手に飴を奪っていく中、周囲からもたらされる囁き声にわたしは髪を振り乱し必死に抗う。

(わたしは……無能じゃない。これはきっと何かの間違いなんだ……。わたしは、無能なんかじゃないっ――!!)


 生まれた時から蝶よ花よと育てられ、表舞台に立つ人生を謳歌して来たわたしは――足元が崩れ暗闇に飲み込まれて行く感触をそこで確かに味わっていた。