ここは王都、大聖堂。
 姉が失踪して三カ月が経つ。

 その頃になって、わたしはやっと大聖女室から治療室に姿を現してやった。
 ……というか、扉をぶち壊されて中から引きずり出されたとも言う。

 どうやら、先日大教皇のマルケットに仕事に出てくれと泣いて頼まれたにもかかわらず、わたしが一歩もこの部屋から出なかったことが問題になったらしい。無残にも大聖女室は破壊され、今は瓦礫で埋まっている。

 どうしてこうなったのか。
 それは、日を追うごとにひどくなる王都の惨状に起因している。
 姉が大聖堂から消えて以後、大聖堂での業務が極端に非効率化し始めたのだ。

 今では治療を望む人の列が長く伸び、最後尾が王都の入り口からはみ出す程になってしまった。これまで日が沈む頃には終えていた治療業務が、日を跨いでも終わらなくなってしまったのである。

 だからわたしは言ってやったのだ。その日で治療が終わらないなら、夜中も働けばいいじゃない――と。そうした考えの元、聖女たちの勤務形態を画期的な昼夜二交代制へと変更までした。