そう、これはただの装飾品ではなく、どうやら身に付けている間私の見た目を変えてくれる道具らしかった。

「変身用の魔法道具なんだ。この日に合わせて作ってもらった。これでセーウェルト人であることを気にせずに街に出れるだろう?」
「……いただいていいんですか?」
「ああ、君に受けた恩はこんなことくらいじゃ返しきれないから、気兼ねせず受けとって」
「ありがとうございます!」

 私はその腕輪を胸元にやり抱き締めた。これが貴重な魔法道具だからとかじゃなく、自分のためにわざわざ用意してくれたということがなんとも嬉しくて。

「じゃあそろそろ行こう。時間が惜しいし。また機会はいつでも取れるけど、今日は今日で楽しみたいからね」
「はい!」

 私は元気に返事すると、殿下が差しだしてくれた肘に腕を掛けた。
 このプレゼントのお陰で、緊張してぎこちなかった私と彼との距離が大きく縮まってくれたようだった。