大聖堂は夏は熱中症、冬は凍傷にかかる患者でごった返す。最近の事だと他国から仕入れた果物が大人気で、王都で大流行したんだけど、セーウェルト人の体質に合わなくて病人が一杯出たこともあった。ちなみに野盗に襲われて殿下に救われた時の話もさせていただいて、とても喜んでくれた。

 そして彼らも話を聞くだけではなく、嬉しそうに自国のことを話してくれる。

 ジュデットの高品質な織物が近年他国で高い価値を認められるようになったとか。でも農業生産による自給率はあまり高くなく、これから課題とするところで、畑違いとはいえローエンさんたち王宮付きの薬師にも相談を持ち掛けていたりするとか。

 そういえば、ジュデットでは馬車ではなく竜車が主要な交通機関になっているんだけど、その竜車を運ぶ騎竜って、びっくりするくらい大きい卵を産むんだって。殻も工芸品の材料として利用されるらしく、どんなのが出来るのか是非見てみたい。

 他にも様々なことが私にとっては非常に興味深いことで、今では毎日のこの時間が楽しみで仕方ない。でも、一つだけ気掛かりなことは、食卓の、私の斜め前にある席からずっと殿下の姿だけが欠けていることで――。

 そしてこの日食事が終わった後、宮内医療棟に勤務へ向かおうとした私を、殿下が外で待っていた。