「どうぞ。ここの園で採れたハーブをお茶にしたものです。気持ちが落ち着くと思いますよ」
「ありがとう、頂きます」

 ほわわんと湯気と共に爽やかな香気が広がり、コトリとティーカップが丸いテーブルの上に置かれる。薬草園の主ローエンさんは短い時間で手際よくお茶を振る舞ってくれた。

 今の彼は小柄で、青年というか少年みたい。あの熊の姿とは大きなギャップがある。

 待つ間ベッカーから聞いた話では、彼はここを先代の管理者から引き継いで以来、ずっとひとりで管理しているのだという。そして魔族の中でも特殊な種族の出身で、昼は人間、夜は熊の姿で生活しているのだとも。もしそうと知らず夜中に出会ったりしたら腰が抜けて、死んだふりでやり過ごそうとするところだった。

 だがしかし……それよりも今の私の興味は窓の外に生育する薬草たちのことで一杯である。

「おいエルシア、ぼうっとしているなよ」
「……はっ、ごめんごめん。楽しみにしてたもんだからついつい目が外に行っちゃって。それにしても、立派な薬草園ですね」