ノックしても出てこないで困っている私を見掛けて、他の看護人さんが扉を開けてくれたんだ。よくあることらしく、本人は悪びれもしない。

 そんな姿を見かけ呆れていた私は、当然言いたいことを言わせてもらう。

「わかってないね。そういうのじゃなくてさ、自分の働きの対価として直接渡してもらえるのが嬉しいんじゃない。向こうにいたころは、家に必要に応じた費用だけを請求してて、自分のお金って感じじゃなかった。だからなんか新鮮なんだ」
「そんなものかね……」

 未だ眠そうな彼を尻目に私は嬉々として給料袋を懐に仕舞い込む。
 しかし楽しい妄想はどんどん押さえきれず膨らんでくる。

 殿下と一緒に王都に出れた時には何を買おうか。
 物欲はさしてない私だけれど、ここは異国。
 触ったことの無い物、経験したことがない事が山ほどある。
 それらから自分で自由にやりたいことを選べるのだ。