「もちろんよ。いいタイミングじゃない、さすがベッカー!」
「何がさすがなのかはわからんが……まあよい。移動しながら話そう。着いてこい」

 白衣を翻すベッカーの隣に着き、私は彼の話を待つ。
 するとベッカーは少し気まずそうに話を切り出した。

「聖女の力は大体の病気に効果があるそうだな?」
「まあね。でも、症状によっては完治しないし、薬の効果の方がよっぽど大きいこともあるよ」

 聖女の力は言ってみれば、自己治癒能力を高める力に近い。
 だから、外傷なんかはものの数十分で塞げたりするし、骨折なんかの治療も得意。

 だけど体内に何らかの病魔が巣食っている場合は、それを取り除いてあげることはできない。
 投薬と併用したりしないと治せない症状も多い、便利ではあるが万能ではない力。どうやらベッカーはそれを使って頼みたいことがあるらしい。

「我々としても、あまりお前に頼り過ぎるのは不本意ではあるのだが、意見だけでも聞きたいと思ってな。もしかしたら殿下から聞いたかもしれんが、今、王女が病で臥せっておる」