――そのはずだったのだけど。

 歓迎の宴から数日。王宮の一室をあてがわれた私は、ぼんやりと過ごしながらこう思っていた。

(この生活、思ったより暇じゃない……?)

 そう、何だか想像していたのと違って、あんまり楽しくない。

 間借りした王宮の一室で暮らし始めた私に、殿下は二人の侍女、ミーヤとメイアを付けてくれた。身の回りのことはすべて彼女たちがやってくれる。だから私のすることは特にない。

 城内をお散歩したり、ミーヤたちとお喋りするのは新鮮だ。けれど彼女たちにも仕事があるからいつもは付き合ってくれないし、そうなると部屋で薬草辞典を眺めているくらいしかやることがない。

 そして密かに期待していたのだが、クリスフェルト殿下もお忙しいらしく、中々すんなりどこかへ観光というわけにもいかない。暇つぶしに手元にある簡易調合器具の手入れもやったけど、それもあまり手持ち無沙汰を慰めてはくれず、大きく窓を開け放った私は頬杖を突くと、くぁ~と大きく欠伸する。