(彼女にあんなことを言われたからかな……)

 この気持ちの正体を、私は少し考えて思い出した。小さい頃、家族から離れようと決意した時に感じた……寂しいという感情。とうに忘れたはずの、私には必要のないもの。

(父上が回復して、気が抜けているのかもな……)

 そんなものを思い出すなんて、父上が病に伏した時から、私は少しずつおかしくなり始めているのか。彼女を……エルシアの事を気に掛け過ぎているのが、自分でもわかる。

「誰かが傍に居る事を心地よく思うなんて、甘え以外の何物でもない。それにやがて彼女は、自分の国に帰らなければならないんだ……」
 
 惑う私はそんな弱さを振り切ろうと、ぐっと顔を上げる。
 しかし頭上から降り注ぐ月の輝きは、彼女の銀の髪の色によく似ていた。