「それで、お父さんは?」

「その時は『うんうん』って頷いてた。きっと、マリッジブルーのことを勉強してたんでしょうね。私の言うことを否定せずに全部聞いてくれた」

「それで、お父さんは変わってくれた?」


その質問に、母親は笑いながら左右に首を振った。


「変わるわけないでしょう? お父さんはね、お母さんを落ち着かせるための方便を言ったまでなの。それでもお母さんは落ち着くことができた。この人なら大丈夫だろうって、思えた。だから、結婚式までを乗り切ることができたのよ」

「それでいいの? なにも変わらないまま結婚して、大丈夫だったの?」


気がつけば由佳は前のめりになって話を聞いていた。
母親のマリッジブルーは、まさしく今の自分みたいだったから。


「もちろん大丈夫よ。だって、嫌なところも全部知った上で付き合ってたんだもの。結婚前で不安になっても、結婚してから何の問題もないわよ」


ケロッと言ってのける母親に感心してしまう。


「私も大丈夫かな? 結婚してしまえば、気にならなくなるのかな」


そう質問してから、自分が達也への不満を持っていることに気がついた。