「なにか私に言わなきゃいけないことがあるんじゃないの?」

「え? えーっと……?」


彩が足を止めて知明を睨みつける。
知明は必死になって自分のしたことを思い出すけれど、やっぱりなにも思いつかなくてそのまま黙り込んでしまった。

それが彩の逆鱗に触れたらしい。


「信じらんない! 今日はもう帰る!」


彩の言葉に慌てて「か、考えるからちょっと待って!」と言っていた。
せっかくディナーの予約までしてあるのだ。

今更キャンセルするのも申し訳ないし、今日はふたりで存分に楽しむ予定だ。
それなのに、一体全体どうしたことだろう。

どうして彩はこんなに怒っているんだろう。