ご飯を話題になれば少しは機嫌がよくなるかと思ったけれど、それも失敗に終わった。
どうして彩がここまで不機嫌なのかわからなくて、知明の方が落ち込んでしまいそうになる。

ひとたび落ち込めばまる1日立ち直ることのできない知明は自分を叱咤して無理にでも微笑んだ。


「それじゃ、甘いものでも食べようか。彩ちゃん、パンケーキが食べたいって言ってたよね?」


数日前のラインでもやりとりを思い出してパンケーキのおいしいお店へ向かう。
今日のデートの予定を決めるときに、確かに彩はパンケーキがいいと言っていた。

あの時まではご機嫌だったはずだ。
だけど今日の彩は大好きなパンケーキと聞いてもにこりともしなかった。

朝あった時と同じように硬い表情のまま知明の隣を歩く。
普段は彩との間に沈黙があっても気にならないけれど、今日の沈黙は少し違う。

隣の彩から感じる負のオーラがひしひしと攻撃してくるのだ。