6月12日の日曜日は大学が休みの日で、小島彩は恋人の山崎知明と共にショッピングを楽しんでいた。

高校時代に柔道部で体を鍛えていたという知明は今でも日課の筋トレを怠らず、服の上から見ても太くなった二の腕がよくわかる。
それに比べて性格はとても温厚で、虫も殺さぬような優しい人だった。

今日も彩の買い物に付き合ってくれているし、嫌な顔ひとつせず荷物も持ってくれている。
本来ならそれで十分のはずだったけれど、今日の彩は朝からずっとふてくされた顔をしていた。

知明が何度「なにかあった?」と質問しても返事をしてもらえず、よくわからないまま昼ごはんの時間になっていた。
満腹になればきっと彩も機嫌を直すはずだ。


「今日は何食べたい?」


知明はひときわ明るい声色でそう質問した。
両手には彩の荷物を持っているから、彼女と手をつなぐこともできない。


「別に、なんでもいい」