5回目の5月15日は、仕事終わりに聡から引き止められることはなかった。
昼休憩のときに告白されているからだろう。

舞は誰からも呼ばれることなく高架下を通り……6回目の5月15日の朝が来ていた。
重たい体を無理やり起こして鏡台の前に座る。

のそのそと寝癖を直して、スマホを確認することなく家を出た。
今まで通り何も変わらない1日が始まる。

申し送りが終わって各々の業務を遂行していく。
ただそれだけ。

そこに感情なんていらなかった。
感情なんてないくても患者さんの変化に気がつくことができる。

それを担当医にちゃんと伝えれば、それで舞の役目は果たされる。


「長谷川さん、元気ないけどどうかした?」


途中で先輩看護師が心配して声をかけてきてくれたけれど、舞は顔に笑顔を貼り付けてやり過ごした。
それで、誰もなにも言ってこなくなった。

《今日》ほど無力だったことはない。