朝起きたとき聡のアドレスが消えていたショックは、仕事をはじめてからも引きずっていた。
おかげで先輩看護師にこっぴどく怒られてしまった。


「ぼーっとしながら患者さんに接してたら、大切な変化を見落とすわよ!?」


久しぶりに雷を落とされて「すみませんでした……」と、肩を落とす。
落ち込んだまま1人で昼休憩に入り、屋上へ向かった。

高いフェンスに囲まれた屋上は日本庭園になっていて、看護師でも患者でも、誰でもここで休憩することができた。
今は昼間だから患者さんの姿は見えない。

舞は大きくため息を吐き出して木製のベンチに座った。
いつも持参している手作り弁当を広げてみるものの、さすがに食欲が湧いてこなかった。

《今日》はあまり良くない変化が起こっているようで、それもこれも自分のせいだという自覚もあった。
だけどどうすればいいかわからない。