女流棋士はクールな御曹司と婚約したい

「桜花、華奢だし清楚だし、守ってあげたいみたいなとこあるし、愛されてるって感じだよね」

桐蔭女子学園校門前、黒塗りのベンツが停まっている。

濃いグレーのスーツを着た如月翡翠が降り立つ。

如月翡翠(きさらぎひすい)２７歳。

明治時代から続く老舗製薬会社の御曹司だ。

身長１８０センチ、細マッチョな感じ、短いサラサラ髪、清潔感漂う、誠実で真面目なイメージだ。

桜花は制服の群れを縫うように、ベンツに向かって駆け寄った。

「少し早かったか」

翡翠は言いながら、桜花の手からさりげなく学生鞄を手にとった。

「翡翠さん、今日は研修会がありますの」

「では、そちらまで送っていく」

桜花は礼を言い、翡翠は桜花の体をそっと支える。

２人がベンツに乗りこみ、翡翠が運転手に行き先を告げると、ベンツは静かに走り出した。

「桜花、棋譜研鑽は順調か？　足らない資料があるなら用意する」