女流棋士はクールな御曹司と婚約したい

桜花は静かに「ありがとうごさいました」と頭を下げた。

負けて迎える感想戦ほど、屈辱的なものはないと、桜花は思う。

清水は感想戦が始まってしばらく、鼻をすすりながら指していた。

わたしの方が優勢だと思っていたのに、清水の顔にはありありとそんな気持ちが浮かんでいた。

桜花と清水が感想戦を終えると、記者が待ち構えていたように、桜花を取り囲んだ。

制服姿の桜花は初々しく、名門女子校の制服姿は清楚で、好感度も高い。

桜花の対局日には試聴室の観覧者も記者の人数も、他の対局日より多い。

「いよいよ予選決勝ですが」

「お相手がどなたでも全力で闘います」

「本戦で待ち構えているのは誰だと予測されますか」

桜花に限らず、誰もが本戦で待ち構えているのは、昨年の清麗戦女王見里加奈子に違いないと思っている。