○桜花病室外。

桜花の見舞いに来た翡翠と吉野が出くわす。

驚いた様子の翡翠。


翡翠「こんにちは、桜花さんのお見舞いに……」

吉野は仏頂面だ。

吉野「翡翠くん。今、桜花は寝ている。院長室に来たまえ」

翡翠「はい」

翡翠は見舞いに買ってきた人気菓子店の包みを持って、吉野の後に続く。

何か不機嫌になるようなことがあったのだろうかと、腑に落ちない様子で。


○院長室。

吉野「かけたまえ」

翡翠「桜花さんのお加減はいかがですか」

吉野「元々あまり丈夫ではない娘だ。先日の対局で消耗している」

翡翠「かなり厳しい対局でした」

吉野「桜花は何故、あれほど将棋にこだわるのか。君に釣り合う女性になりたいと言う」

翡翠「私にですか」

吉野「何か心当たりはないかね?」

翡翠「……思い当たることは」

翡翠は首を傾げ、黙りこむ。