うだるような暑さに耐えられなくて寝転んだまま、テーブルに手を伸ばして、雑に置いてあったクーラーのスイッチを押した。

すると、ウイーンと機械音が耳に届き、しばらくすると冷たい風が継続的に吹いてきた。


俺は今、高校二度目の夏休みを過ごしている。

いつもなら舞い上がるほど嬉しいはずなのにどこか手放しで喜べないのは美桜に会えないからだ。

付き合っているわけでもない俺と美桜が夏休みに理由もないのに会えるわけもなく、メッセージでのやりとりしかできないという不完全燃焼な日々を過ごしているのだ。

夏休みなんて永遠に続けばいいのにと思っているのに今は違う。

早く終わってほしい。じゃないと君に会えないから。


「櫂、あんたいつまで寝てんのって……櫂ってアップルパイとか好きだったっけ?」


いきなり俺の部屋の扉を開けるなり、テーブルの上に食べようと置いてあったアップルパイを見て、入ってきた人―――佑香が目をぱちぱちとさせた。


「いやー、買うつもりとかなかったんだけど無意識に手にしててさ」