新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

「ミサに何を言われたのかは知らないが、 お前は自分の体を治す事だけを今は考えていればいい」
「でも……でも、 それはミサさんが納得しないんじゃ……。 私が居なければ、 高橋さんはまたミサさんと……」
エッ……。
高橋さんが、 握っていた両手に力を込めた。
「さっきも言ったが、 俺は最初からその気はない」
「何故ですか? 私には、 どうしても私のせいような……」
「だから、 お前も居た方がいいんだ」
高橋さん……。
「その方が、 俺とミサが何を話しているかがわかるし、 お前にも聞いてもらいたいから」
「高橋さん」
トントントン。
明良さんとの電話から30分ぐらい経った頃、 ドアをノックする音がして静かに開いたドアの向こう側に、 明良さんとミサさんの姿があった。
ミサさんの姿を見て、 緊張感と一緒に手が震えてギュッと毛布を握りしめた。
明良さんが無言でドアを閉めて、 そのまま腕を前で組みながら私にニコッと微笑んでくれると、 それから高橋さんとミサさんを交互に見てドアの横の壁に寄り掛かった。
すると、 椅子に座っていた高橋さんが立ち上がると、 ドア付近から少し中に入ってベッドの足元付近に立ったミサさんと対峙した。
ミサさんの顔を、 やはりまともに見られない。
「呼び立てて、 済まなかった。 そして、 誓約内容と少し異なってしまった事をお詫びする。 しかしながら、 先日の君の行動を鑑みて当然の成り行きかと思われる事として、 理解して欲しい」