新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

「高橋さん。 私の我が儘を……聞いてくれますか?」
「何だ?」
「もう……帰って頂いてもいいですか?」
「……」
高橋さんは、 何も言わずに私を見ている。
「それと……」
本心では無いことを、今から言わなければいけない。
でも、 高橋さんはもっと傷ついて悩んで困った挙げ句、 私の我儘を聞いてくれたんだもの。 今度こそ、 高橋さんの我儘を受け入れなければいけない。
「高橋さんの我儘を……高橋さんのお願いを……私……やっと理解出来ました。 時間が掛かってしまって、 ごめんなさい。 こちらこそ、 我儘を言ってしまって、 ごめんなさい」
何だか、 誰に話しているのか分からなくなってきていた。 まるで、 ひとり芝居でもしているようだった。
「どういう意味だ?」
「自分でも、 よく分かりません。 でも、 気づいたんです。 私も、 何が一番大切なことなのかを」
言っていることが支離滅裂だった。
「もう寝た方がいい」
「あの……」
まだ、 どうしても言わなければいけない事があった。
それなのに、 高橋さんは左手で私の頭を撫でながら立ち上がると、 椅子を元の位置に戻した。
「また来るから。 それまでには、 元気になってろよ」
高橋さん……。
「それじゃ、 おやすみ」
「おやすみなさい」
高橋さんは、 何かを察してくれたのか。 深く追求する事はせず、 そのまま病室を出て行った。
高橋さん……あと何日、 高橋さんと一緒にいられ……。
エッ……。