新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

この人、 何を言っているんだろう?
「貴博の子供を守る為だったら、 違う人と結婚して貴博の子供に幸せを与えられるのだったら、 私はもう……それでいいってね」
「そんな……」
そんなのって、 あり得ない。 自分の気持ちは、 どうなるの? 高橋さんの気持ちは、 どうでも良かったの?
「だから、 罰があたったみたい。 今回こんな事になって……それで、 貴博と再会して……。 本当に、 いい男に成長していたわ」
いい男に成長していた……。
昔の高橋さんを知っているからこそ、 言える言葉。
もしかして……ミサさん。 今でも高橋さんが好き……なの?
「貴博に骨髄移植をしてもらって、 本当に嬉しかった。 子供に貴博の力を貰えたって事が、 凄く嬉しかった。 でも……」
でも……何?
何だか嫌な予感がして、 ミサさんから視線を外して前を向いた。
「本当は、 いつ拒絶反応が出るかわからないの。 だから、 貴女にお願いがあるんだけど」
「私に……ですか?」
何だろう?
何? お願いって……。
「もし……もしも、 うちの子供に拒絶反応が出た時の為に。 今の医学は、 進歩していてね。 親よりも兄弟の方が、 移植の適合割合が高いのよ」
どういう意味?
ミサさん。 私に、 何を言いたいの?
「万が一に備えて、 うちの子を助けるためには……あの子に弟か妹が必要なの。 だから貴博との間に、 もう1人子供が欲しいのよ」
やめて!
何、 言い出すの? ミサさん。
「でも……頑なに、 貴博はそれを拒んだ。 きっと、貴女が居たからね」
そんな……。
「貴女と、 貴博のマンションで会ったあの時、 そのお願いに行ったのよ。 話している途中で貴女が現れて……直感したわ。 貴博は、 貴女を愛しているってね」
愛して……いる?