新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

病は気からとは本当によく言ったもので、 高橋さんがまた私の事を受け入れてくれてからというもの、 毎日頑張って食事も摂るようになった。 ただ食べたいという気力もなかったこの2週間近くで、 胃が小さくなってしまったせいか、 自分が思っているほど食べられない。 だからその日によってムラも多かったが、 まだ少し続いていた微熱も最近では落ち着いてきて、 肺のレントゲンを撮ってみてもだいぶ綺麗にはなってきていた。 結果は、 まだスッキリとまでには至らなかった。 しかし、 足腰は弱りつつあったので気分転換とリハビリも兼ねて、 昼間の暖かい時間は病院の中庭まで散歩に出て、 お気に入りの本をベンチに座って読む事が、 日課となっていた。 殺風景な病室でジッとしているだけではお腹も空かないし、 気分も滅入ってしまうんじゃないかと明良さんがアドバイスしてくれて、 主治医の先生に相談したところ、 体調が良くてお天気の良い暖かい日だったらという条件で、 許可してもらえた。
それからというもの、 午後のそのひとときは私にとって本当に楽しみな時間となっている。 みんなは忙しく働いていると思うが、 でもそれを考えてしまうと気持ちばかり焦ってしまってよくないからと、 高橋さんが 『 暇つぶしにでも読んでごらん? これ、 面白いよ 』 そう言って、 病院に来る時に、 必ず持ってきてくれる本を読みあさっていた。 高橋さんの気遣いに、 感謝している。 本当に、 優しい人なんだ。 入院して、 初めてわかった事があった。 高橋さんは、 無類の読書好きだったのである。
そんな読書をする時間などなさそうに見えるのだが、 夜寝る前とか外出で電車に乗っている時とかには、 必ず本を読んでいるらしい。
高橋さんの事で、 ちょっとした新しい発見が出来て嬉しかったりする私って、 やっぱり相当重症なのかもしれないな。 でも高橋さんの事なら、 何でも知りたいんだもの。