新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

高橋さん?
高橋さんが、 まゆみを呼び止めた。
「何でしょ?」
まゆみは、 ドアの方を向いたまま返事をした。
「この前は、 突然電話でお願いして悪かった」
な、 何?
この前って……。
すると、 まゆみはクルッと振り返った。
「別に……。 陽子があんなになるまで酔ってしまった原因が、 お陰でわかりましたから」
まゆみ……。
そのまま、 まゆみは病室から出て行ってしまった。
高橋さんに、 謝らなきゃ。
「ごめんなさい……。 まゆみが、 また酷い事を言ってしまって……」
明良さんの言っていた事が、 今頃になって蘇ってきた。
悩んでいるって。 ショックで堪えているって。
「いや、 本当の事だからいいんだ」
「高橋さん……」
そのまま、 暫く沈黙が続いてしまった。
そして、 殆ど話す事もなく高橋さんは立ち上がり、 帰ろうとしていた。
「また、 明日来るな」
「高橋さん。 もう、 本当に大丈夫ですから。 せっかくのお休みなんですし……ゆっくりされて下さい」
そんな社交辞令の会話を交わしながら、 気まずいまま別れた翌日。 やっぱり高橋さんは、 お見舞いに来てくれた。
昨日の今日で、 何となくぎこちない。 会話もあまりなくて……何だか申し訳なくなってしまう。 それでも傍にいてくれる高橋さんの姿を見て、 安心している自分がいた。