校則違反だよ……?
誰かに見つかったら大変なことになる。
「お前に会いたくなったから来ちゃった」
とびきり甘い笑顔を浮かべて言う漆葉くん。
そんな彼の笑顔にまたドクンドクンと鼓動が早鐘を打ち始める。
会いたくなったって、そんなのズルいよ。
ていうか、近い。
距離が大変近くてわたしの心臓が大爆発してしまいそう。
「つーか、俺が誰だかわかっちゃったんだ」
唇に人差し指が触れていて話せないので、コクコクと首を上下に振る。
あの時点で気づけなかったわたしは本当にポンコツだよ。
「ふーん。それは残念」
なんて、言いながらそっとわたしの唇から人差し指を離す。
「あの、うる……」
「名前、教えてよ」
この前はごめんなさい、と謝ろうとしたのに言葉を遮られてしまった。



