え……なに!?
入学早々、誰かに誘拐された!?
もしかしてわたしが漆葉くんを家に泊めたことがバレた!?
「そんな怖がんないでよ」
耳に届いた聞き覚えのある声。
この声……漆葉くん……?
いや、でも彼は芸能科だから一般科の棟になんて来るはずがない。
漆葉くんのこと考えすぎて、ついに幻聴まで聞こえるようになったのかな。
恐る恐る、ぎゅっと瞑っていた目をゆっくりと開いた。
「う、漆葉く……!?」
ここにいるはずのない彼の姿が目に入った瞬間、大きな声を上げそうになり、唇に彼の細くて長い綺麗な人差し指が触れた。
「こら、静かにしろ。バレるだろ」
なんで……!?
ここって一般科の校舎だよね!?
まさかわたし間違えて芸能科の校舎に来てたの!?
「安心して。ここ一般科の棟だから」
じゃあ、なんで……漆葉くんがここに?



