ゆったりとしたピアノのメロディに善くんの歌声が最高にマッチしていて、何より歌詞が心に響き、
痛いくらいに善くんの想いが伝わってきてポロポロと涙が溢れ出して、止まらなくなる。
「善、くん……っ」
こんなにわたしのことを想っていてくれたのにわたしは自分が傷つくのが怖くて、逃げ出して彼を傷つけてしまった。
あの事務所に呼ばれた日、善くんは本当に別れを告げようとしていたのか。
きっと、違う。
誤解だと言おうとしてくれたんじゃないのか。
それをわたしは嫌いになったと言われるのが、振られるのが怖くて彼の言葉を聞く前に終わらせたんだ。
曲が終わって、イヤホンが沙綾ちゃんの手によって外された。
「あたしが言うのもなんだけど、あなたは善にとってこんな素敵な曲を作っちゃうくらい大事な人なんだから自信持って。きっと、善はあなたのことがだいすきでしょうがないはずだから」



