自分から手放したくせに、もしかしたら、まだわたしを……なんて淡い期待を抱いてしまっている自分がバカみたいだ。
カズくんはわたしの言葉を聞くと、ふっと目を細めて笑った。
「そっか。ちゃんと伝えてくれてありがとう。これでようやく俺も前に進めるよ」
わたしの頭の上にぽん、と手を乗せて優しく撫でてくれた。
ずっと、ずっと昔から彼に頭を撫でてもらうのが好きだった。
でも、もうこれで最後かな。
優しいカズくんに、いつか素敵な人が現れるといいなあ。
「こんなわたしを好きになってくれて、優しくしてくれてありがとう」
「こちらこそ。これからも幼なじみとしてよろしくな」
「もちろんだよ」
「じゃあ、俺行くわ」
そう言うと、少し潤んだ瞳で彼は手を挙げて歩いていった。



