《善side》


『だから、わたしは善くんのファンに戻るから安心して!もちろん付き合ってたことも口外しないし!それじゃあ、幸せになってね。今までありがとう……っ!』


涙を堪えながら一生懸命笑顔作って言うと、勢いよく部屋を出ていった柚音ちゃん。

彼女は俺の言葉も聞かずに一方的に話して、涙を必死に堪えながら別れの言葉を投げつけて飛び出して行った。


俺は、追いかけられなかった。

いや、本当はすぐにでも追いかけてその手を掴んで『誤解なんだ』と言って、あの震えた小さな体をそっと優しく抱きしめてあげたかった。

でも……それができなかった。


柚音ちゃんに嫌われたんだと思うと身体が鉛のように重くなって動かなかった。


それに報道が出てしまったことにより、俺は今注目されているとのことで不必要に外に出ることを控えて欲しいと事務所に言われた。


事務所に誤解であることも説明したけど、世間ではかなり大騒ぎになっているということで事態が静まるまでは大人しくしておくようにと釘を刺されたのだ。