カズくん、額に汗が滲んでいるし、息も荒い。
もしかして、報道を見てわたしのこと探してくれてたのかな。
昔から本当に優しい人だなあ。
「あんなやつやめて俺を見て、俺のこと好きになってよ」
「え……」
「俺なら柚音のこと、こんなに泣かせたりしない。絶対に幸せにするから真剣に考えといて欲しい」
体が離れて、曇りのない真っ直ぐな瞳がわたしを捉える。
「カズくん……」
「今すぐに答えなくていい。ずっと俺、柚音の答え聞くの怖くて逃げてたけどもう逃げないから。次こそちゃんと聞かせて」
にっこり、と柔らかく優しい笑顔を向けてくれた。
「わかった。ちゃんと考える」
「ありがとう」
善くんのこともちゃんと気持ちを整理して、カズくんのこともちゃんと考える。
きっと、善くんのことを忘れられないだろうけど。
「そういえば、この前駅前にマカロンショップができててさ、さっきマネージャーが買ってきてくれたから食べる?」
茶色い紙袋を顔の横に持ってきて、首をコテンと傾げたカズくん。



