「ん?どうしたの?」
「さっき、ステージから柚音ちゃんのこと見つけたよ」
それだけ言うと、また前を向いて歩きだしてしまった。
え……?
わたしが目が合ったと思ったのって勘違いじゃなかったの!?
それは……ちょっと嬉しい。
ボッ、と赤くなっていく顔を隠すように両手で覆って、その場にしゃがみ込んだ。
ドッドッドッ、と高速で甘い音を奏でる鼓動は善くんに会ってからもうずっと鳴り響いている。
「……はあ、もうほんとに好きすぎる」
ぽつり、と呟いた言葉は誰の耳にも届かず、体育祭の歓声にかき消された。
それから競技は進んで、わたしの玉入れも無事に終わり、善くんが出場するクラス対抗リレーも大盛り上がりで終えた。
善くんの足の速さはダントツで、ぶっちぎりの一位だったので、これまた彼のファンが増えたこと間違いなしだった。