「あ!みて!お母さん!今、カズくん出てる!」
テレビを指さして、画面に映っている男の子をじっと見つめる。
今回はジュースのCMか。
本当にすごいなあ。
「和真くんも今やすっかり売れっ子ね」
「うん、すごいよねえ」
「月曜日に運が良かったら会えるんじゃない?」
「会えないよ。芸能科と一般科は別棟だし。自分の入学式でもないし忙しいから来ないんじゃないかな」
わたしの視界に画面越しに映っているのは1つ上の幼なじみの上埜和真。
今をときめく売れっ子俳優。
ずっと小さい頃から近所に住んでいて、親同士も仲の良かった彼と離れたのはわたしが小学生6年の時だから、もう彼の記憶の中にわたしの存在なんて残ってないんだろうなあ。
いっぱい可愛い子たちと共演してるし。
「まあ、忙しいものね」
「たとえ、会えてもあっちは覚えてないよ」
別に覚えててほしいとかは思ってないけど、カズくんはわたしの初恋相手なのだ。