「ほんとに漆葉くん一筋だねえ」
「気づいたら、ね?」
「まあ、漆葉くんもゆのたんに夢中だもんね」
なんて、前の席に座って頬杖をつき、わたしを真っ直ぐに見る希織ちゃん。
「うーん、それはわかんない。近くにあんなに可愛い子がいたら目移りしててもおかしくないよ」
「菊池沙綾ちゃんのこと?」
「うん。だって女の子から見ても可愛いし綺麗だし、キラキラしてるじゃん」
わたしなんかと比べるのも失礼なくらいだということもわかっている。
善くんのことを信じていないわけじゃないけど、心の中に居座る不安はどうしても消えてくれない。
「会えない時って嫌なことばっかり考えちゃうよね」
「そうなの。ほんとは違うってわかってるんだけどなんか不安になるというか……」
「不安になるくらい漆葉くんのことが好きってことだね」
「うん、好きだよ。笑っちゃうくらいね」
ほんとに暇さえあれば、頭の中で善くんのことを考えちゃうくらいには好き。



